F・K Homeが出来るまで
寒冷地の別荘で都会の生活スタイルを実現させたいという思いからのスタート
水抜き不要であり、全天候型非氷点下住宅の別荘ができるまでのストーリーをご紹介しましょう。F・K Homeの第一棟は富士見高原に造ることになりますが、みんなが集いやすい楽しい別荘を建築したいので、まず最初に考えたことは、以下の通りです。
- 冬場の水抜き・水通し作業をしなくてすむ家を造りたい。
- 夏の湿気対策とカビ対策に悩まない家造りと冬の結露を気にせずに暮らしたい。
- メンテナンスが面倒でなく夏涼しく冬暖かい魔法瓶のような住まいにしたい。
しかし、標高1200mの高地に別荘を建てることの難しさを痛感します。通常、寒冷地の森の中に建てる住宅である以上、いろいろなことを我慢せざるを得ないと考えるのが普通です。一般的に情報を集めると「家の中には虫が這い回る」「トイレは水洗ではないかもしれない」「水道は井戸を掘るところもあるらしい」、そして「冬場は水抜き水通し作業を行わないと水道管が凍結し破裂してしまう」等々、夢が遠のくことばかりです。
夏はともかく冬は零下20度を下回るほどの気象条件の富士見高原では、別荘建築に際して以下の条件を満たさなければなりませんでした。そして、それが結果として全天候型非氷点下住宅「F・K Home」が誕生することになります。
- 現地に夜中着いても、そのまま普通の状態で利用できること。
- 雨・雪でも荷物搬入等が楽なように、屋内駐車場を造ること。
- 南側に大きめのウッドデッキがほしかったので、デッキ側及び駐車場入口側に屋根から雪・氷柱が落ちないような屋根形状にすること。
- 薪ストーブを主暖房に、家中が暖まるようにすること。
- 外壁・屋根材にメンテナンスが少なくて済むものを使用すること。
- 人の不在期間が長くても室内の空気がこもるようなことが無く結露や湿気・カビなど不快な室内環境 を防ぎ、快適性を保つこと。
この6つの条件を満たすための建築工法や様々な住宅性能について検討した結果、基礎も含めて丸々断熱できる外断熱工法の高気密・高断熱住宅を選択しました。そして、水回りの配管関係をすべて地下から屋内へ引き込み、配管がなるべく露出しないようにしました。また、屋根からの氷柱や落雪対策と外観重視を考え、家の周りになるべく住宅周辺機器を設置しないように努めることにしました。
理想を集約すると「都会の生活スタイルをお山で実現させる」ということになります。一つのプロジェクトとして取組むことになり、対策と対応を順次考えていきました。
サッシ関係はすべて断熱効果の高いアルゴンガス入りの複層Low-Eペアーガラスです。外壁は煉瓦張り、屋根は瓦で基本的にメンテナンスフリーの住宅です。そして、屋根からの氷柱・落雪の危険を想定し、安全なところに落下するようにあらかじめ落としどころを決めた、屋根形状とした設計です。
その効果は当然夏の暑さ対策としても効力を発揮し、通常の別荘であれば窓を全開にして風通しを良くすることで暑さをしのぎますが、F・K Homeの場合は窓は一切開ける必要がありません。24時間計画換気によって約2時間に1回強制的に空気が換気されます。窓を開けると返って暖気を呼び込む形になり室内温度が上がってしまいます。従って冬暖かく夏涼しい文字通り魔法瓶のような住環境となっています。そのため、湿気や結露・カビといった心配も無用です。
長野県諏訪郡にある富士見高原は、八ヶ岳のほぼ西麓にあり標高1200mほどの高地です。冬期は零下14~20度にまで下がるので、一般的な別荘建築であれば冬の期間は当然大変な思いをしなければなりませんが、高断熱・高機密のF・K Homeでは、室内温度が氷点下にならないので、屋内の家庭電化製品等の心配がなく、水道管破裂の心配もありません。別荘に到着してすぐにトイレも利用できます。それこどが、都会の生活スタイルをお山で実現させた住まいなのです。
F・K Homeは、様々な工夫によって、住宅自身が氷点下まで下がらない住宅を実現しました。3年間冬期間の屋内外の温度測定を行い、最低外気温度が−18度のときでも、屋内は+3度までしか下がらないことが実証されています。冬の時期にいつ出かけても、室内は+温度なため、暖房にかかる費用も節約でき、薪ストーブ一台で全室がすぐに暖まります。簡単で楽々仕様の住宅ということで、高齢の両親や女性達だけでも簡単に気軽に別荘生活を過ごすことのできる住宅なのです。
天候の如何にかかわらず住宅が氷点下にまで下がらない「全天候型非氷点下住宅」仕様にするための建築時にかかる費用は、住宅を氷点下にしないための熱源である「蓄熱式暖房機」代金の20万から30万円のみがプラスしてかかるくらいです。ランニングコストは、冬期期間は毎月2000円~3800円程で、その他の夏季期間は基本料金400円弱の深夜電力料金のみで生活可能です。冬期間水道管・ボイラー・洗面器具や水洗器具を凍結により破損させる危険性を考慮すると、その費用対効果は十分で通常の寒冷地住宅での水道管等の露出配管に敷設している電熱コイルの電気代金の方がよほど経費がかかります。
この住まいの利点は、最初にも述べましたが水抜き・水通しが不要なこと、家電製品が零下にさらされないことでパッキン等の凍結などによる故障が少ないこと、そして、屋内の薪が凍ることがないので、薪ストーブの立ち上がり(巡航温度250度)が早く、燃料消費が少ない省エネ住宅でああることです。同時に不凍液などを使用しなこと等、環境と人と家族に優しさと楽しさを与える住宅といえます。
実際に住んでみると「真冬でも信じられないくらいに暖かいこと」「薪ストーブの暖かさはとてもやさしいこと」「真夏は信じられないくらいに涼しいこと」「家の中には虫が這い回ることもほとんど無いこと」など、嬉しい体験ばかりです。
そしてある時、元特許関係のお仕事をしている知人から、「なぜ水抜きもしなくていいし、2階にもトイレがあってウォシュレットも付いていて、そして何より全室みんな暖かいのはどうしてなのか?」と聞かれ、水抜きが不要で住宅自身が氷点下までに冷え込まない工夫をした建物であることを説明したところ、とても驚かれ、普通では考えられないことなので「是非特許出願したほうがいい」と薦められました。特許事務所の弁理士さん曰く、「十分『発明品』として有効です」とのお墨付きをいただき、発明品名称「全天候型非氷点下住宅」F・K Homeとして実用新案特許権を出願することにしました。